新型コロナウイルスの流行によって、私たちの働く環境は大きく変化しています。
従来はオフィスに集まって働くことが主流で、職場=オフィスという考え方が一般的でした。
しかし、在宅勤務やコワーキングスペースの充実など、オフィス以外でも快適に働ける環境が整ってきた中で、その前提も変わりつつあります。
多様な働き方がある今日で、積極的にオフィスで働くことを選ぶのであれば、経営陣側と社員側のどちらにとっても“快適”である必要があります。
今回はレイアウト変更にターゲットを絞り、レイアウト変更を成功に導くためにどういった点に注意して取り組んだら良いのか、オフィスづくりのプロが手順の全てを徹底解説します。
オフィス業者に依頼する前にすること
プロジェクトチームを発足する
デスクの位置や荷物の位置を変えるシンプルなレイアウト変更以外では、プロジェクトチームを発足することが推奨されます。
レイアウト変更を成功させるには、社内の意見を確認したり方向性を決めたりと予想以上に時間がかかります。
空間レイアウトはオフィスを使う全ての社員の働きやすさにかかわるため、丁寧にプロジェクトを進めていく必要があるので、プロジェクトの中心となって推進力をもって実行できるメンバーを選定することが重要です。
レイアウト変更が必要になった背景を整理する
引っ越し作業などがないレイアウト変更工事であっても、少なくない費用が発生します。
また、通常業務以外の作業負担が社員に発生する点に注意しなければいけません。
何かを移動させるのであれば、移動させるデスクやワゴンの整理、キャビネットの中身の出し入れ・整理整頓などが発生します。
プロジェクトメンバーであれば、このような作業内容を全員に通達し、実行してもらう必要があります。
現状の課題や不満点が什器や物品の導入、廃棄などで改善できないかを改めて慎重に検討することが必要です。
全体スケジュールを計画する
レイアウト変更する場合、「いつまでに完了するか」を早急に決定する必要があります。
人員が増えるのであれば、新しい社員が来る日までに完了しなければいけませんし、
予算消化のために実施するのであれば、期末までに全工事を終わらせる必要があります。
オフィスにかかわる什器や工事部材の調達は、通常のネット販売などとは異なり、発注から納品まで3~4週間かかる場合が多いため、事前に余裕を持ったスケジュールを立てることが極めて重要です。
もちろん、良いレイアウトを熟考するための時間も必要になるため、
最低でも完了希望日の2~3ヶ月前には大まかなスケジュールを決定することが望ましいです。
また、壁の位置変更などの大規模なレイアウト変更工事をする際は更に注意が必要です。
ビルごとに条件は異なりますが、防災設備や空調設備などのビル設備を変更する場合には、
基本的にはビル管理会社との連携が必要になります。
更にビルオーナー側との事前協議・原状変更申請などの書類提出が必要になる場合もあるため、余裕をもったスケジュール立てが必要です。
将来の人員計画を確認する
レイアウト変更の際に一番気をつけなければならないことは、せっかく変更したレイアウトがすぐに役に立たなくなってしまい、また変更をしなければならなくなることです。
追加工事が必要になってしまうと余分な費用が発生するばかりではなく、それに対応するための人的リソースも余分に使うことになってしまいます。
直近でレイアウト変更が必要になる大きな要因としては、人員の増加による座席数やキャビネットの不足が大きいため、レイアウトを考えるときには、今後の人員計画を踏まえる必要があります。
プロジェクトのメンバーを選定した後は、今回改善していきたいポイントを考える前に自社の将来の人員・事業計画を把握するようにしましょう。
経営陣・現場の声を確認する
「社員が使いやすいオフィス」が必ずしも会社にとって有益とは限りません。社員目線も重要ですが、最も重要なのは「オフィスに投資をした分の確かなリターンを得ること」です。
オフィス自体はあくまで空間であり、直接的な利益を生むわけではありません。オフィスがもたらす「生産性の向上」とは、働く環境の整備、社員のコミュニケーション問題の解決、デザインによるブランディングなど、オフィスを使うことで利益を生み出しやすい環境・企業文化を創造することを指します。
そのため、会社の成長を考えた経営陣の目線から、新しいオフィスと今後の社員の働き方に何を期待するのかを理解してレイアウトに反映する必要があります。
もちろん、実際にオフィスを使う社員の働きやすさも重要な要素であるため、社員目線を外すこともできません。
経営陣と従業員との双方の目線から、最適なオフィスの要素を見つけることが重要です。
オフィス環境の改善によって生産性向上を実現するためには、高い視点から見てどういった改善が必要なのかを知る必要があります。
空間的な使いやすさだけに限らず、全社的に幅広く意見を収集しましょう。
オフィス・ラボではこうしたステップからサポートさせていただいております。
トップインタビューや全社サーベイなど幅広く対応していますので、オフィスの環境改善に何から着手していいかわからない場合は、是非お気軽にお声がけくださいませ。
テーマ(目標)と変更規模、予算を決定する
プロジェクトチームも決まり、背景の整理と現場インタビューも終わった後には、
今回のレイアウト変更工事で実現する“テーマ(目標)”を決めましょう。
テーマを明確にしていれば、その後の業者選定での比較も用意になり、
レイアウト変更後の効果測定もよりわかりやすくなります。
今までご相談いただいたお客様の例を抜粋しますので、ご参考までにご確認くださいませ。
- 今後の人員増員に柔軟に対応できるレイアウトにする。
- リクルーティングやブランディングのためにデザイン性を高めたオフィスにする。
- 社員のウェルビーイング向上のためにリフレッシュスペースを作る。
- WEB会議の音問題を解決するための個室、ブースを導入する。
このように自社にとって必要な要素をテーマ(目標)とし、
そのテーマを実現するために必要な変更内容を決め、
そこから実際にオフィスに投資しても良い逆算して予算取りをしましょう。
大まかな要件を定義する
業者に依頼する前の最後のステップとして、大まかな仕様書(RFP)を作成することが好ましいです。仕様書があれば、依頼先に漏れなく要望を伝えることができます。
更にコンペ形式で業者決定をする場合は、複数業者に都度詳細を説明する手間が減る上に、
統一された内容での依頼になるために正確な比較検討をしやすくなるメリットがあります。
大まかな仕様書には、少なくとも以下の内容を記載しましょう。
- 実施時期(全体スケジュール)
- 予算
- テーマ(目標)
- 必要不可欠な必要な部屋構成・座席数(従業員数)
- 全体像のイメージ(デザイン・実現したいこと)
- その他(各業者に期待すること)
上記の大まかな仕様書が完成したら、各業者への依頼へと踏み切りましょう。
業者選定の時にすること
どのように依頼をするかを決める
レイアウト変更の一番の目的は、設定したテーマ(目標)を実現して成果につながるオフィスを作ることです。
そのため、コストを抑えるだけではなくて目的を予算・期間内にトラブルなく要望を実現できるオフィス業者を選定することが重要です。
ビル側との交渉や消防法・建築基準法・労働安全衛生法などの各種法令チェックをしっかり実施してくれるかどうか、難しい工事に対応できるかをチェックすることが重要です。
力量不足のオフィス業者に依頼してしまうと、使いづらいだけではなく法令違反になるオフィスになったりしてしまいます。
そうなるとかけた労力が無駄になる上に、追加の是正工事のためのコストが発生するリスクがあります。
こうした事態を避けるためにも、依頼先の業者はしっかりと精査しましょう。
実際には、工事の規模によって声をかける業者の選定基準は異なるため、
以下の選定基準を参考に依頼先を検討し、何社に声をかけるかを決めましょう。
変更の規模が小さい場合の業者選定
規模が小さく内部移動や新規什器を数台導入するだけなど、そこまで難しい作業が発生しない場合は物流会社や電気工事業者のみでも対応可能です。
しかし、単一の工事業者などを選定した場合は、工事内容の打ち合わせなども含めてプロジェクトチームが対応する必要があります。
また、什器選定についても、什器をいられるかどうか正確な寸法を測ったり
最適な商品を選んだりと手間は大きくかかってきます。
こうした業務に精通していない場合、思わぬ落とし穴に気が付かない恐れがあります。
対応の手間やトラブルを防止するためにも、提案・設計・工事監理を一貫してサポートできる業者に任せることをおすすめします。
変更の規模が大きい場合の業者選定
大規模なレイアウト変更を実施する場合は、業者の対応力を見極めることが重要です。
オフィス業者を選定するポイントは大きく下記の6点になります。
- オフィスの設計の実績が豊富であること
- プロジェクトマネジメント力
- 施工力
- 担当者のレベル
- コスト力
- デザイン力
どれだけ良いデザインでも施工力がなくて実現できなければ意味がなく、
コスト力があってもスケジュールと予算を守れなければ逆に費用が高くつき、
また、プロジェクトマネジメント力、施工力があったとしてもデザイン力がなければ希望に沿ったものは仕上がりません。
そして極め付けは、どれだけ良さそうでインパクトのあるデザインが施工できたとしても、
「生産性の向上」に結びつかず成果が上がらないオフィスなら、オフィスに投資した意味がありません。
適切なスケジュールで予算内にご希望のレイアウトを実現するためには、全ての能力が高い業者を選定することが極めて重要です。
そのため、基本的にはオフィスの設計を専業にしていて、知見が豊富な業者に依頼することが推奨されます。
業者選定で陥りがちな失敗を避けるためには
また、業者選定前にデザインや什器などの詳細設計について比較しようとするケースが多いかと思いますが、これは多くの場合、プロジェクトの失敗につながります。
具体的な内容で比較しようとすると情報量が大幅に増加してしまい、判断材料が増えてかえって意思決定が難しくなります。
結果として選定に時間を費やしてしまって全体スケジュールが崩れ、希望の施工日に間に合わせるためにどこかで妥協をせざるを得なくなるケースが見受けられます。
よりよいレイアウトを実現するためには、詳細設計で比較検討をするのではなく、提案時の基本設計で優劣を判断して業者を確定し、決まった業者と時間をかけて詳細設計を検討していくようにしましょう。
業者決定の後にすること
レイアウト・インフラ仕様・デザインを検討する
依頼する業者が決まった後は、詳細設計の打ち合わせを複数回に渡って実施しましょう。
施工範囲によって検討範囲は異なりますが、大まかに決めるものは以下のようになります。
- 什器と備品の転用計画ならびに廃棄物の整理
- 電源やネットワーク機器、電話などの社内インフラの必要数と配置
- セキュリティシステムとの連動
- 各空間の動線計画・什器や電子機器などの内部仕様の確認
- 壁紙やカーペット、什器のカラーなど内装デザイン
これらも基本的には全て事前に材料などの発注期間があるため、
着工の2ヶ月、遅くても1ヶ月前には仕様が確定している必要があります。
可能な限り早めに比較検討と意思決定を進めていかなければいけません。
工事立ち会いの日程についてオフィス業者と協議する
オフィスのレイアウト変更工事は、基本的には土日祝に実施する場合が大半です。
休日にプロジェクト担当者が鍵開けや鍵閉めをしていただくことも多いですが、
工期が長期間に及ぶ場合、毎週工事に立ち会うのは現実的ではありません。
基本的にはお客様に代わってオフィス業者が責任を持って現場監理の対応をしますので、
セキュリティーカードの受け渡し、鍵の開け締めの方法の共有、緊急時の連絡先の共有など、
土日に現場を託すオフィス業者に必要な情報共有と取り決めを行いましょう。
作業日前に全社員に必要な情報をアナウンスする
レイアウト変更工事の内容が決まり、後は実施をするだけになったら
社内で必要な作業をアナウンスして全社員に動いてもらう必要があります。
社内で発生する作業としては、以下のような作業が想定されます。
- デスク・ワゴンの私物の整理・ダンボールへの収納
- 移動対象物へのラベルの貼付
- 作業日前日に電子機器の電源を落とすこと
工事工程に影響を及ぼさないように、作業前日までにオフィス業者に依頼された状態にしておく必要があります。
全社員に事前にアナウンスをして作業内容を浸透させ、通常業務の間に進めていただくか、
作業日を設定して必ず前日までに作業が完了するように社内調整を進めましょう。
同時に、運用開始後のトラブルを避けるため、新しいレイアウトの使い方の周知などもこのタイミングで行いましょう。
心配であれば竣工後に新レイアウトの使い方を周知する社内説明会を実施しましょう。
レイアウト変更が終わったら効果検証をする
無事にレイアウト変更工事が終わった後は、実際に運用してみて最初に設定したゴールが実現できたかプロジェクトメンバーで評価をしましょう。
また、社内にもアンケートを実施するなど意見を収集して、今後の微修正に向けて準備を実施しましょう。
レイアウト変更の成功は、要件の定義と業者選定が肝心
オフィスにとって必要な条件は常に変化します。大きな方向性から細かい仕様のすべてが、レイアウト変更の成否を分けるため、すべてを一括して対応出来る業者に依頼した方が、成果が上がるオフィスを完成させやすくなります。
オフィス・ラボはヒアリングから設計施工・アフターフォローまでトータルサポートしております。
また、デザインや施工のみの部分サポートのどちらにも対応しておりますので、レイアウト変更をご検討なさる際は、お気軽にお声がけください。
具体的なレイアウト変更の話以外にも、今回の記事でもわからない点や相談したいことがございましたら、お気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。