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【Designer’s Report】会社にふさわしいエントランスとは?

2023.04.28 #デザイン、什器家具 #移転改装

こんにちは、オフィス・ラボです。「DESIGNER'S REPORT」は、空間デザイナー目線で、働く場にまつわる様々なことについて、考察していくレポートです。「100社100通り」のオフィス創りを常々心がけています。そんな働く空間が、どのように創られているのか、今回も事例を通じてご紹介していきます!今回はオフィスのエントランスについて、最近の事例を挙げながらもう一歩深く踏み込んで考察したいと思います。

はじめに

会社の「過去(歴史と業績)」「現在(商品と技術)」「未来(コンセプトとリクルート)」を考えることからスタートします!私たちはエントランスデザインの提案を考える際に、その会社の概要、歴史、技術、商品、などについて深く調べますが、それは過去、現在について知り、さらに未来を考えることになります。そこから導かれたキーワードなどをヒントに、ふさわしいカタチを探していきます。

会社に相応しいエントランスとは?

右脳的、左脳的な発想に分けて考える

私たちが考えるエントランスデザインの持つ可能性は大きく分けて2つあります。

①右脳的発想(感覚的、直感的) → 見た目を重視
・目指すパブリックイメージ(格式、雰囲気など)を表現する。
・シンボルロゴ、コーポレートカラーなどのCIをアピールする。

②左脳的発想(理論的) → 付加価値を重視
・機能(待合い場所、ミーティング、ショールーム)がある。
・なんらかのメリットをもたらす。

常にこれらを念頭に置いてデザインすることで、その会社にとって意味のあるエントランス空間を作ることが出来ると考えています。

「見た目」を重視し来訪者の右脳に「色や形」で訴える提案

株式会社帆栄物流様「あたたかさとスピード感」

・パブリックイメージ、雰囲気
お客様からのご要望は細かい木材あるいは石材の積層した壁を使うことでした。それを客様自身が考えられている会社のパブリックイメージであると解釈しました。

・固有のシンボルとしての表現
ロゴデザインを引用した形状をご提案しました。社名サインの印象を拡大した上で少し暈し、サブリミナル的に潜ませ、また斜体の角度を借用してデザインに取り込むことで物流業務のスピード感も表現しています。

壁の中にHの斜体文字を馴染ませ、壁面全体で表現しました。

ガラス越しのエントランスに「柔らかいテクスチャ」と「シャープさ&シンボル性」が同居します。運ぶ荷物を大切に扱う「優しさ、あたたかさ」と物流業務の「スピード感」とが共存する表現となりました。

株式会社ネットランド様「高級感と反転する“N”の空間」

・パブリックイメージの具現化
お客様からのご要望は、石などの高級感のある仕上げ材料を使うことでした。そこで、高級感を演出するため、可能な限りの大判の石板を提案しました。

・シンボル性のある表現
アルファベットのNの形状のように空間が反転する雰囲気を抽象的に表現しました

・潜在的なNの隠喩
会社名NetLandの“N”の文字のもつ、空間を反転させる形状を壁の構成に取り入れました。

・陰影の反転を受付、待合スペースとしての機能とシンクロさせます。

入口から正面に向かって左側は来訪者が椅子に座って待つ場所であるため、壁高さの中央より下向きの手元を照らすライティングを配置しています。また、中央および右側の部分は立位で会社名サインに向かい受付電話を使う場所であるので上向きを照らすライティングとしました。どちらも光源のありかたを慎重に検討し、間接照明で表現しています。

「付加価値」を重視し来訪者の左脳に「機能や情報」で訴える提案

付加価値を作り出す提案もあります。そのためにクライアント企業様についてよくリサーチし、目的(ねらい)と機能(しかけ)を設定します。

株式会社大成プラス様「生み出され続ける技術の歴史」

クライアント企業様はプラスチック成型の事業をされていて、様々な製品の部品を企画、制作されています。ご依頼はエントランス、およびオープンなミーティングスペースをつくることでした。

・目的(ねらい)→最新技術のデモ、サンプルの紹介など広報、宣伝としての役割
・機能(しかけ)→過去のサンプル、業務履歴の陳列、収納

このガラス間仕切りの手前には等間隔に穴の開いた透明アクリルを立て、透明感を確保しつつ、壁面全体を過去の製作物の掲示板とします。掲示されている製品サンプルは常に作り出され続ける製品と随時更新していくため、来訪者は訪れるたびに前回とは違う壁面と向き合うことになります。ここでは過去の実績を物量の迫力で表現し、また新しいものへの挑戦をアピールすることが出来ます。

株式会社久栄社様「アートと技術のショールーム」

クライアント企業様は印刷事業をされていて、様々な形態の印刷物や広告物の企画、制作をされています。ビル内の1フロアのエレベーターホールの様相を新しく変えるご要望に対しての提案です。

・目的(ねらい)→最新技術のデモンストレーション、若い世代への情報拡散
・機能(しかけ)→自社製トリックアートで『映える』演出

エントランススペースでこれらの製作物や技術を大きく打ち出してデモンストレーションをします。来訪された方々には『体験』として大きなインパクトを与えます。さらにそれが写真に撮られることで、『情報』となりSNSを通じて世界中に拡散されます。

ここでは3つの提案をさせていただきました。

A案 トリックアート

トリックアートの技術を壁面、天井面に展開します。
各部の絵は大きくゆがんでいるものの、特定の視点からのみ正確な画像が浮かびあがるのを見ることができます。それにより来客者様を楽しませるとともに、これから行われる打合せにおいて、思考を柔軟にする準備運動にもなります。

B案 製品とキービジュアルの活用

これまで製作されたもの、あるいは最新のキャラクターポップを壁面に引っ掛けて展示します。会社のキービジュアルに寄せた色と形状にパネルを割り付け、印象付けるとともに、写真にとられて拡散されます。

C案 印刷技術のアピール

こちらの会社は高い技術による印刷を得意とされています。日常的に作られているサンプルをご提供いただきそれを拡大してバリエーションを表現することで、来客者の方にとっては非日常の体験としてインパクトを与えることができます。

まとめ

①右脳的な発想→美しい、かっこいい、高級感などの直接的な見た目の印象を追及
②左脳的な発想→付加価値、会社の利益につながるものの追及

クライアント企業様の企業コンセプト、業務、製品などを右脳的、左脳的それぞれの視点から考察し、訪れる方のあらゆる感覚に訴え、また企業としての利益につながる表現を目指します。

クライアント企業様にとっても、その提案を見て意見交換をし、完成までのプロセスを共有することは、そのまま過去・現在を振り返り、未来について考えるという、とてもポジティブな体験になります。また、会社の目指すイメージを正確に伝えることができると、よりふさわしい人材をリクルートすることにも繋がります。

 

オフィス・ラボではお客様との二人三脚で、100社100通りのご提案に日々挑戦しています。働き方について日々研究をし、試行錯誤を繰り返しています。「働く空間」全般のプロデュースが私たちの得意分野です!こんな働き方をしたい!この悩みを改善したい!などのご要望があれば、是非一度相談をお待ちしております。

ファシリティデザイン部
この記事を書いた人
オフィス・ラボ担当者
ファシリティデザイン部

FD部メンバー。オフィスのレイアウトからデザイン、什器備品の提案まで幅広くご対応させていただきますので、お気軽にお声がけいただけますと幸いです。