オフィス移転では、多くの従業員が関連するタスクを担いますが、とりわけやるべきことが多いのは総務担当者の方です。スムーズなオフィス移転を成功させるためには、やるべきことを期間ごとに区分けして、整理しなければなりません。
この記事では、オフィス移転の1年前から当日までに、総務がやるべき20のことを詳しく解説します。
オフィス移転にかかる期間は?
オフィス移転にかかる期間は規模によっても異なりますが、一般的には8ヶ月~1年程度の準備期間が必要です。その間にやるべきことは多いため、プロジェクトチームの構築をはじめ、計画立案から移転先ビル選定、オフィス運用などの全般を任せられる会社への依頼も検討しましょう。
【1年~8ヶ月前】オフィス移転における総務のタスク
オフィス移転の1年~8ヶ月前までに総務がやるべきことは、次の4つです。それぞれポイントを含めながら解説します。
<【1年~8ヶ月前】オフィス移転における総務のタスク>
➀現オフィスの解約予告期間・原状回復の条件を確認する
②オフィス移転の予算計画を立てる
③新オフィスを選定し、契約する
④現オフィスの解約予告・原状回復の手続きをする
それぞれを具体的に見ていきましょう。
➀現オフィスの解約予告期間・原状回復の条件を確認する
解約予告期間は、契約満了の3~6ヶ月前に設定されることが一般的です。退去時には原状回復が必要なため、以下の条件を確認しておきましょう。
<原状回復の条件で確認すべき項目>
・契約先が指定する工事業者の有無
・敷金や保証金の返還時期
・自社主導で行う原状回復工事の範囲
・工事費用の概算
・原状回復にかかる工期の目安
なお、原状回復工事には「B工事」と「C工事」の2種類があります。
B工事:ビル側の指定する業者で、テナント側が費用を払って発注する工事(高い)
C工事:テナント側が指定する業者で、テナント側が費用を払って発注する工事(安い)
一般的には、B工事で原状回復を行います。費用を抑えるためにできることは、以下のとおりです。
<原状回復工事の費用を抑えるポイント>
・業者が出してきた見積もりが正確かどうかを精査する
・減額交渉を行う
・一部C工事として原状回復ができないか交渉する
②オフィス移転の予算計画を立てる
退去にかかる費用を踏まえたうえで、オフィス移転の予算計画を立てます。予算が確定しなければ、オフィス移転に伴い購入する什器や、新オフィスの家賃などを決められません。作業中にイレギュラーが発生する可能性もあるため、ゆとりのある予算計画を立てましょう。
③新オフィスを選定し、契約する
希望する条件に合った新オフィスを選定し、契約します。選定ポイントは、次のとおりです。
④現オフィスの解約予告・原状回復の手続きをする
現オフィスの解約予告を行い、原状回復の手続きをします。解約予告をしても、契約満了日までは継続して、オフィスを利用することが可能です。原状回復工事への立ち合いは原則として不要で、一般的には引き渡し検査なども不動産会社が対応します。
【7~3ヶ月前】オフィス移転における総務のタスク
オフィス移転の7~3ヶ月前までに総務担当者がすべきことは、次の6つです。それぞれ、ポイントと併せて解説します。
<【7~3ヶ月前】オフィス移転における総務のタスク>
➀移転に必要な業者を選定し、契約する
②新オフィスのレイアウト作成・工事の手配をする
③OA機器や什器備品の発注・処分を決定する
④社内インフラの移転手続きをする
⑤郵便・電話の移転手続きをする
⑥社内にオフィス移転の告知をする
それぞれを具体的に見ていきましょう。
➀移転に必要な業者を選定し、契約する
オフィス移転に必要な業者を選定しましょう。オフィス移転では、次のような業者のサポートが必要です。
<オフィス移転に必要な業者>
・旧オフィスの原状回復工事を行う業者
・新オフィスの内装工事を行う業者
・新オフィスの電気・通信・セキュリティ工事を行う業者
・新オフィスの什器・OA機器・インテリアなどの販売業者
・引越し業者
・不用品回収業者
上記のサービスをトータルパッケージで提供する、オフィス移転専門業者もいます。オフィス移転専門業者に依頼すれば、プロジェクトチームの構築からオフィス移転後の運用・管理までを一括で任せられるため、便利です。
②新オフィスのレイアウト作成・工事の手配をする
新オフィスに関する計画で最初にすべきことは、レイアウト作成と工事の手配です。移転の目的や移転先オフィスの規模などを踏まえて、内装やデスクの配置などを決定します。
まずは、目的に応じて空間を区分けする「ゾーニング」を行いましょう。ゾーニングで各部署に必要なスペースを把握できたら、それぞれの空間をより細かく設計するレイアウトを行い、希望する施工が可能な業者に依頼します。
③OA機器や什器備品の発注・処分を決定する
新オフィスで使用するOA機器や什器備品を検討します。現オフィスで使用しているOA機器や什器を流用できる場合は流用し、移転コストを削減しましょう。新オフィスで必要になる主なOA機器・什器は、次のとおりです。
【主なOA機器・什器】
OA機器 | PC、電話・ファクシミリ、コピー機、複合機、シュレッダーなど |
---|---|
什器 | テーブル、チェア、ソファ、カタログスタンド、書庫、ボード、ロッカーなど |
新しいOA機器や什器備品が必要な場合は、購入するか、それともリースにするかを決めて、移転に間に合うように発注します。また、現在使用しているOA機器・什器が不要になる場合は、不用品回収業者に見積もりを依頼して、処分の手配をしてください。
④社内インフラの移転手続きをする
以下の社内インフラについて、移転手続きが必要です。
<移転手続きが必要な社内インフラ>
・インターネット
・電気
・ガス
・水道
インターネットは、開通工事の予約が1~2ヶ月後になるケースも多いため、早めに契約しましょう。なお、インターネット変更に伴い、各機器のIPアドレスの変更、プリンタのドライバ変更、無線アクセスポイントの設定などが必要です。
⑤郵便・電話の移転手続きをする
郵便や電話の移転手続きを行います。手続き先と内容は、次のとおりです。
⑥社内にオフィス移転の告知をする
従業員などに向け、社内にオフィス移転の告知を行います。告知の内容は、次のとおりです。
<オフィス移転の告知内容>
・新オフィスの移転先住所やアクセス
・新オフィスに移転する日時
・現オフィスの荷物を整理する期日
・オフィス移転に関する問い合わせ先
【2ヶ月前~前日まで】オフィス移転における総務のタスク
オフィス移転の2ヶ月前~前日までに、総務担当者がやるべきことは次の9つです。
<【2ヶ月前~前日まで】オフィス移転における総務のタスク>
➀Webサイト・印刷物の住所を変更する
②名刺・ゴム印を発注する
③新オフィスのセキュリティカードを準備する
④社外にオフィス移転の案内をする
⑤重要な文書・資料のバックアップをとる
⑥入居するビルのルールを確認する
⑦新オフィスのルールを作成・通知する
⑧引越し資材の手配・荷造りをする
⑨不要品を処分する
それぞれポイントも交えながら、詳しく解説します。
➀Webサイト・印刷物の住所を変更する
移転に合わせて、Webサイトや印刷物に記載している住所を新住所に変更します。Webサイトの運用を外部に委託している場合は、委託先に新住所を通知し、どのタイミングで更新するかを伝えましょう。旧住所が記載された封筒などの印刷物は廃棄し、移転までに新住所を記載した印刷物に切り替えます。
②名刺・ゴム印を発注する
従業員の名刺やゴム印も、新住所のものに変更する必要があります。従業員全員分の名刺を欠かさずに、発注しましょう。新しい名刺やゴム印は移転当日から使いはじめるため、発注先の納期を確認し、ゆとりを持って発注することがポイントです。
③新オフィスのセキュリティカードを準備する
新オフィスで使うセキュリティカードも、従業員全員分の準備が必要です。セキュリティがIT化されたビルの場合、セキュリティカードを持っていない従業員は、オフィスへ自由に出入りができません。顔認証システムや指紋認証システムを導入している場合も、事前の登録が必要です。
④社外にオフィス移転の案内をする
取引先など、社外に向けてオフィス移転の案内をします。通知方法は、次のとおりです。
<社外に向けたオフィス移転の通知方法>
・取引先を訪問して直接お知らせする
・電話やメール、FAXによるお知らせ
・はがきによるお知らせ
・ホームページやSNSでお知らせする
・プレスリリースを行う
具体的な通知内容は、新住所や新しい電話番号・FAX番号・メールアドレス、オフィス移転の日時などです。
⑤重要な文書・資料のバックアップをとる
引越し作業中に、データを消失・紛失するリスクがあります。重要な文書や資料は、万一のトラブルが起きたとしても守れるよう、移転前にバックアップをとりましょう。移転後は、通信関連のインフラがすべて刷新されるため、バックアップをとっておけば安心です。
⑥入居するビルのルールを確認する
入居するビルの管理規約などを確認し、ルールを把握しておきましょう。ビルによっては、災害発生時のトラブルなどを見据えて、観葉植物などインテリアの設置を制限している場合があります。そのため、ビルのルールを事前に確認し、規約の範囲内でレイアウトを決定しなければなりません。
そのほかにも、以下のようなルールを確認しましょう。
<確認が必要なルール>
・ゴミ捨てに関するルール
・作業届の提出先
・その他の禁止事項
特にゴミ出しに関するルールを把握できていないと、ビルの管理者や同じビルに入居しているそのほかの企業との間で、トラブルに発展しがちです。トラブルのないオフィス移転・オフィス運用を遂行するために、ルールは細かく確認しておきましょう。
⑦新オフィスのルールを作成・通知する
新オフィスの使い方などを社内ルールとして整備し、作成しましょう。特に旧オフィスと異なるルールがある場合は、その箇所を強調して伝えると分かりやすく、親切です。
新しいルールを作成できたら、すべての従業員に向けて通知します。通知方法としては、掲示板への掲出と併せて、書面の配布やメールの送信などを行うと、浸透しやすくなります。より徹底した周知を行いたい場合は、社内説明会の開催も検討すると良いでしょう。
⑧引越し資材の手配・荷造りをする
事前に立てた計画を基に、新オフィスに移転させる什器備品の荷造りを進めます。書類や文房具などの小さなアイテムは、ダンボールにまとめて引越し業者に預ける方法が一般的です。必要な個数のダンボールとガムテープ、破損を防ぐための「プチプチ」などを用意しておきましょう。
デスクやチェアなどの什器に関しては、引越し業者に依頼する場合は、原則としてそのままの状態にしていて構いません。中身はすべて取り出して梱包しておき、什器だけの状態にして、引越し業者に運搬を任せましょう。
⑨不要品を処分する
新オフィスに移動させない不用品は、処分します。旧住所が記載された書類などは、シュレッダーにかけて廃棄しましょう。それ以外の什器備品は、不用品回収業者に依頼して、引き取ってもらうことが一般的です。見積もりの際に、引越し当日までの回収が可能かを確かめておきましょう。
【当日~1ヶ月以内】オフィス移転における総務のタスク
オフィス移転当日~1ヶ月以内に行う総務のタスクは、次の2つです。
<【当日~1ヶ月以内】オフィス移転における総務のタスク>
➀引越し当日、作業に立ち合う
②各種行政手続きをする
それぞれ、ポイントにも触れながら詳しく解説します。
➀引越し当日、作業に立ち合う
引越し当日は、旧オフィスと新オフィスの両方を訪れて、引越しの作業に立ち合います。
旧オフィスでは、鍵やセキュリティシステムの返却、什器・荷物の置き忘れがないかなどの確認作業が必要です。また、必要に応じて引越し業者に協力し、什器や家具の移転をサポートしましょう。荷物の運び出しが完了したら掃除を行い、最終的な整理を済ませます。
新オフィスでは、計画どおりの内装に仕上げられているかどうかを確認し、事前に決めたレイアウトのとおりに什器やOA機器の設置を依頼します。また、念のため運び込まれた荷物の内容を確認し、運び忘れた荷物がないか確認しましょう。
②各種行政手続きをする
引越し完了後は、以下の各種行政手続きを行います。
まとめ
オフィス移転で総務担当者が担うタスクは、少なくとも20個と多いです。スムーズかつミスのないオフィス移転を成功させるためには、オフィス移転の約1年前から準備を進め、タスクをひとつずつ確認しながら消化しましょう。
理想的かつスケジュールどおりのオフィス移転を行うには、オフィス移転専門業者への依頼がおすすめです。専門業者は、この記事でご紹介した20の項目はもちろん、移転先となるビルの選定や、移転後の運営などもトータルで行っています。専門業者に依頼することで、ミスのないオフィス移転を実現できることに加え、総務担当者の方にかかる負担を減らせるため、通常業務に支障をきたす心配もありません。
「オフィス ラボ」は、オフィス移転のトータルプロデュースが可能です。移転をお考えの企業様は、ぜひ一度お問い合わせください。