こんにちは、オフィス・ラボです。
「DESIGNER'S REPORT」はオフィス・ラボのデザイナーが、設計者としての目線で、働く場にまつわる様々なことを、考察していくレポートです。
普段私たちが大事にしている「100社100通り」のオフィスをどのように創っているのか、今回も事例を通じてご紹介していきます!
今回は、オフィス・ラボと隈研吾建築都市設計事務所とのコラボレーション案件についてご紹介させて頂きます。
はじめに
今年の2月に竣工した 東急不動産 様の案件についてご紹介いたします。
今回はオフィス・ラボと隈研吾建築都市設計事務所様とのコラボレーション案件です。
オフィス・ラボが外部パートナーとのコラボレーションをすることによって得られた 『 短期間でもハイクオリティな提案を形にする 』 効果についてご紹介いたします。
プロジェクト概要
まずは、本案件のプロジェクト概要についてです。
渋谷ソラスタ7Fに入居されている東急不動産株式会社様。フロア面積は528坪でした。
戸建てやマンションなど環境に配慮された住まいの提供に従事される「住宅事業ユニット」の皆様が働くエリアのオフィスリニューアルプロジェクトでした。
今回の要点は全般の工事スケジュール監理や安全監理などのマネジメント業務です。
計画から工事開始まで約5ヶ月。工期は約8ヶ月を要しました。従業員約180名が通常業務をされている中での工事でした。フロアを仮設の間仕切で3つに分割し、3工区を移動しながら1工区毎にお客様に引き渡す形で工事を進めていきました。
ほぼ全域の天井仕上材を撤去して、スケルトン天井に変更しながら内装や使用する什器の構築を行っていかなくてはなりません。従業員の安心、安全は絶対です。工区の切り替え・移動は、速やかに行い、工事機材の移動は夜間の内に慎重に行いました。
それぞれの役割
本案件の各社の役割についてご説明いたします。
今回のプロジェクトは、冒頭でお伝えした通り、外部の設計事務所様とコラボレーション案件です。
デザイン立案、監修を、隈研吾建築都市設計事務所様に担当して頂きました。
弊社は、基本設定、実施設計、請負施工、施工管理を担当し、お客様や隈研吾建築都市設計事務所様、ビル管理会社様やB工事業者様との橋渡しをしながら、全体をマネジメントするPM(プロジェクトマネジメント)として進行していきました。
こうしたコラボレーションをする事におけるメリットとしては2つあります。
メリット 1
複数のデザイナーから幅のある提案をさせて頂くことが出来ます。クライアントの中で元となるテーマがあるが、どう形にすれば良いか分からないといった場合でも、より専門性の高い技術を持ったチームが協業することで、通常よりも更に高い、精度と専門性を兼ね備えた成果が短期間で実現可能です。
メリット 2
設計事務所様から頂いたコンセプトデザインを実施計画に落とし込みをしていく段階では、いかに現実的な工期に間に合うような工程を組めるのか、クライアントの予算に合わせるためにどういう工夫をするのか、といった調整作業が必要になります。その際、弊社と設計事務所様とで綿密な打合せを重ねて、納期短縮の工夫や、コストダウンの方法を議論していきます。時に、ファシリティマネジメントのプロの意見として、将来的な変化に対する柔軟性などの視点を考慮した代替案を提案していくことで、設計事務所様にも、お客様にも納得いただきながら、実施に向けてプロジェクトを進めていくことが出来るのです。
本プロジェクトは、規模に対して、工期が短く、実現したいクオリティのレベルも非常に高い内容でした。限られた時間のなかで、お客様の思いを設計者とPMが、コラボレーションすることでお客様の希望を最大限に実現することが出来ました。
完成写真
それでは、いくつか竣工写真を上げながら詳しくご紹介致しましょう。
こちらは、エントランスの写真です。
コンセプトは「オーガニックリボンが緑との交流をつなぐ、森のようなオフィス」
スケルトン天井に、オーガニックリボン(木製のルーバー)が幾重にも重なりながら、まるで大きな河のようにフロア全体にまたがっています。
各所に配置された観葉植物がエネルギッシュな雰囲気を作り出しており、働く人にパワーを与えてくれそうです。
デスクや収納など什器に関しては、元々持っていた物をできる限り捨てずに活用をしました。コスト圧縮はもちろんのこと、東急不動産様の環境配慮の考え方を本プロジェクトにおいても実践していきたいという思いがあったからです。
具体的な例では、個人ロッカーなどの収納家具は既存の家具を全て活用しながらも所々組み換えて、造作のBOX型の什器と混合させることでデザインに統一感を出しています。一方でエリア内に2箇所設置した、OAコーナーは、その一角を囲う収納類を、同じBOX型什器で全て造作にしています。また、今回は執務デスクの80%を造作で製作しましたが、その内、30%は既存のデスクの脚のパーツを再利用して天板のみを造作にしました。
更には、今回造作をしたデスクや収納は全て、木の廃材を用いたOSBや合板、MDFなどの再生材料を採用しています。使える物は出来るだけ活用し、新たに製作する物においても、再生材料を積極的に採用することで、デザイン面を意識しながらもコストメリットが感じられるようにポイントを明確にしサスティナブルに配慮しました。
「オーガニックリボンが緑との交流をつなぐ、森のようなオフィス」というデザインコンセプトで、オーガニックリボン(木製のルーバーに植栽の装飾を施した造作物)を幾重にも重ねながらスケルトンの天井から吊り下げ、フロア全体を一つに繋げました。造作はコンセプトを表現出来る重要な要素になるということもあり、プロジェクト全体の中でも特にこだわりの強いデザインとなっています。 しかし、現実的な工期や予算に着地させて、実際に納めていく為には、オフィスの設計やコスト管理においては、弊社のこれまでの豊富な知識を活かし、コストマネージメントを徹底いたしました。コンセプトを軸とした目指すべきデザインを叶えながらも、予算超過しないように常に意識して進めていきました。
ポイント整理
今回、デザイン面において極限まで追求されている隈研吾建築都市設計事務所様の方々とお仕事をさせて頂き感じた中で、特筆すべきポイントは2つです。
◎ポイント1:プロジェクトの実現にむけたチーム一願の思い
◎ポイント2:コラボレーションによるそれぞれの役割とシナジー
【ポイント1:プロジェクトの実現にむけたチーム一願の思い 】
今回 約500坪の執務室全体を一本のオーガニックリボンで切れること無く繋ぎ通すという壮大な造作工事を行いました。様々な苦難が計画当初から予測されましたが、予想通り、試行錯誤の連続で現場で検証しながら進めました。しかし、困難な工事になると分かっていながらも実行に踏み切ったのは、プロジェクトの実現には、オーガニックリボンが必要不可欠だったからです。
プロジェクトの実現には、お客様を含めた全ての関係者の思いがありました。様々な困難はありましたが、チーム一願となって、思いを共有して実現を目指していきました。
プロジェクト実現にかけるパワーは、デザイナーの思いだけに限りません。プロジェクトが進んでいくに連れて次第にチーム全員のものとなります。その思いが一つになるからこそ、厳しい条件のもとでも、プロジェクトを実現出来ました。
【ポイント2:コラボレーションによるそれぞれの役割とシナジー 】
隈研吾建築都市設計事務所様のコンセプトの設定や、表現力、デザインにおいては、同じプロのパートナーとしても多くを学ばせて頂きました。有名建築で数多く実績を出されているということもあり、ダイナミックでインパクトのある空間演出がとても印象的でした。
我々オフィス・ラボでは、お客様はもちろんプロジェクトに関わる全ての企業様と密な連携をとることで、各社の強みを最大限に引き出すトータルマネジメントをさせて頂きました。その結果、プロジェクトを成功に導くことが出来ました。
オフィス・ラボではお客様との二人三脚で、100社100通りのご提案に日々挑戦しています。
働き方について日々研究をし、試行錯誤を繰り返しています。
「働く空間」としてのオフィスはもちろん、働き方や運用など、経営装置としてのオフィス全般のトータルプロデュースを行っています。
こんな働き方をしたい!この悩みを改善したい!などのご要望があれば、是非一度相談をお待ちしております。