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【Designer’s Report】動物病院 設計・意匠計画のポイントをご紹介!

2022.12.21 #移転改装

こんにちは、オフィス・ラボです。
「DESIGNER'S REPORT」はオフィス・ラボのデザイナーが、デザイナー目線でオフィスにまつわる様々なことについて、考察していくレポートです。普段私たちが大切にしている「100社100通り」のオフィスをどのように創っているのか、今回も事例を通じてご紹介していきます!

Designer's Report 動物病院

はじめに

「動物病院様の新規開院プロジェクト」の一例をご紹介をさせていただきます。
一口に動物病院と言っても、実はいくつか分類されることは皆さんご存知でしょうか。
それは大きく4種類あります。

● かかりつけ医院
● 夜間 / 緊急病院
● 専門医院
● 大学付属病院、総合病院

本件は、総合病院に分類されます。一般の動物病院では導入が難しい、CTやMRIによる精密検査や専門的な治療や手術を行うことができる特殊な施設となります。

プロジェクト概要

まずは、工事・プロジェクトの概要紹介です。

場所は、横浜・関内エリアに位置する、スタイリッシュな外観の一般的なオフィスビルの1Fです。面積は、約50坪とそれほど大きくありませんが、特殊機能を有した設備機器を効率よく配置することでスペース内に納めています。診察室・手術室・CT室・MRI室・入院室など総合病院として必要な機器を配置しました。

本件は、物件探しから工事までをトータルでお手伝いさせていただきました。物件選定では、立地、賃貸面積、搬入動線、床の耐荷重、電気容量など押さえなければならないポイントがいくつもあります。それらを一つずつスピーディーに確認・検証をして選定していきます。

物件探しには、概ね2〜3ヶ月の時間を要します。今回は、数件の候補物件でテストレイアウトを作成・検討、2か月ほどで決定し、契約までをサポートさせて頂きました。また、物件が決まってから着工まで約1ケ月、工事着工から竣工まで1.5か月と非常にタイトなスケジュールでしたが、無駄を徹底的に省いた効率的なスケジュールにより、無事開院を迎えることができました。

プロジェクトにあたっては、設計・意匠計画、施工管理業務、各省庁との協議、申請業務、工事一式を一括で担当させて頂き、新規開院に向けフルサポートさせて頂きました。

物件紹介

こちらのビルは、もともと医療ビルとしての特殊機能とオフィスビルとしての一般的な機能の両方のスペックで建てられた新築ビルでした。

お引渡し状態は、壁が素地仕上げ(プラスターボード)のままで、床はOA床がある状態で、天井のみが岩綿吸音板で仕上がっていました。いわゆる「スケルトン渡し」と言う状況に近い状態です。内装造作、仕上工事はもちろん、給排水、換気・空調、電気設備もすべてC工事(お客様の手配でできる工事)で新設工事となりました。防災設備工事に関しましてはB工事(ビル側指定工事)のご協力のもと工事いたしました。

ゾーニング

ゾーニングは【エントランス→診察室→検査室→MRI室→CT室→滅菌室→オペ室→入院室】
と業務の流れに合わせた無駄のない動線計画となることをお客様と共に意識して決定しました。

完成写真

こちらが実際に出来上がった院内のお写真です。

エントランス

こちらのどうぶつ病院は都内や千葉エリアに3店舗あり、4店舗目となる本医院は横浜エリアへの初開院となりました。今回のご要望は地域性に配慮した空間デザインの調和というものだったため、「横浜らしさ」ということも意識したデザインのご提案になりました。エントランスは、ゲストを迎え入れる大事な空間でもあり、オーナーも強い拘りをお持ちでした。「港」「うみ」「古き良き」と言ったその土地の “らしさ” を大事にしつつも先進性との調和を考えました。壁面はブルーや木目、ヘリンボーン柄のクロスで港町をイメージさせる空間を演出しました。

元々あった天井仕上げ材の岩綿吸音板をはずし、スケルトン空間を演出することで建物の特性である天井の高さも空間創りにしっかりと盛り込みました。さらに、より空間が明るく映えるように天井を白く塗装し、開放感を感じることができるようにしました。訪れた患者さんにとっては限られた時間、空間ですが、安心や安らぎを感じて快適に過ごしていただくための演出に配慮しました。

今回のデザイン面でのポイントでもある「働くみなさんがより高いパフォーマンスを発揮できること」が病院の最大ミッションでもあると思います。そこで、機能面とのバランスにも配慮しました。
総合病院としての特有な機能を成立させるため、動線も重要なポイントでした。特にスタッフオンリーのエリアでは利便性(無駄のない動線)や機能性(収納力)を重視した設計とし、無駄を省き、意匠性とのバランスをとれている事がコストカットにも直結する効率的構築となりました。

MRI室

続きまして、特殊設備MRI室(磁気共鳴映像装置)のご紹介です。

MRIは強力な電磁波を発します。CT室やX線室などの鉛のシールドとは異なり、MRI室は銅板や銅箔による電磁シールドが必要で、天井・壁・床すべてに磁気が外へ漏れないように銅板で密閉されたお部屋をつくります。

隙間なく銅板を施工するのも安全に使用するための特殊な工事のひとつです。

突然ですが、ここで問題です。
MRIが一体どれほどの重さかご存じでしょうか?

答えはなんと、、、10トン!!

一般的にオフィスフロアの耐荷重が200〜300kg/m2となりますので、いかに規格外の重さかお分かり頂けると思います。この重さに耐え得る床にするために、H鋼と呼ばれる鉄骨で下地の補強をして重さに耐えられる床をつくります。本件では、ステンレス製のH鋼を4本下地として使用しています。

動物病院のこだわりポイント

動物病院の設計・意匠計画をするにあたってのこだわりポイントを4つまとめました。

①機能性の確保

床材は清掃性が高く、動物たちが滑りづらい防滑シートを選定しています。粗相があっても拭くだけで掃除ができてしまうような防水性があることは大事なポイントです。また、防滑性があることで動物たちにとっても足腰に負担がかからずに歩行できます。あくまで、そこに来るのは人だけではないことを忘れてはなりません。

②搬入動線の確保とレイアウトのバランス

CT機の搬入には1200mm幅、MRI機の搬入には1600mm幅の通路の確保が必要です。その上、MRI機は10トンの重さがありかなりの大型搬入物です。工事作業工程の観点から言えば、10トンの物を運ぶため、壁や床に傷がつかないように仕上前に搬入作業を行う必要がありました。そのために、壁の造作、床の仕上げや各種取り合いにおいては何度も打ち合わせを重ね綿密なスケジュール調整を行いました。大型の機器を設置する総合病院総合病院ならではの重要なポイントでした。

③院内のネットワーク構築

最新機器を導入した総合病院においては、情報通信も重要な構成要素です。各機器と診察室は、全てネットワークでつないでどこからでもタイムリーな情報共有と確認ができる環境づくりは必須でした。

④効率的な空間創り

先ずは、省スペース+どうぶつ病院において見落としがちな点は収納スペースです。実際の運営上、収納スペースはいくらあっても困らないということです。部屋の隅、高い位置などの空間に効率的、機能的な収納を配置し、収納量を可能な限り増やしました。

Designer’s Report

最後に設計担当者として、この案件を通じて感じたことをまとめてみました。

プロジェクト関係者との連携・スケジュールの管理の重要性

プロジェクトは、全体スケジュールを組むところから始まります。各関係者と各工程で必要な日数や時間を事前に把握してすり合わせていきます。私たちは、通常オフィス構築を数多く手掛けていますが、総合病院の構築では少しいつもとは違うところに気を遣います。ここでは、医療機器の専門業者(CT機、MRI機、レントゲン機器、手術用機器など)など様々な工事が入ってきます。特殊機器の搬入では、時期や経路、タイミングに制限があります。そのような諸条件を軸に工程の調整が必要でした。多くの関係者が関われば関わる程、「いつ・だれが・何の工事をするか」の管理と、各社と常に情報を共有しながら連携することが必要になります。

機能性とデザインのバランスの重要性

本プロジェクトにおいて、命を扱う空間ということを特に意識しました。そこで働く医師たちのストレスを最小限にするためにできる事は何かを一番に考えました。そのためには、動線を考慮し、機器類の置き方や高さは非常に重要でした。様々な寸法を計測し、使い慣れている感覚からのギャップを少しでも減らせるよう意識したりと、いつも以上に機能面については配慮して進めて参りました。

オフィス・ラボより

私たちは、常に現場を知ることの重要性を考えています。
「お客様の立場になって考える」とよく言いますが、想像するだけでは正直限界があると感じています。机上の設計にならないよう現場に行って、お客様の生の声を聴いて「知る」ことが大事だと感じています。丁寧なヒアリングや現地確認を通じて表面的な情報だけでなく、ちょっとした雑談の中からも大事な情報を逃しません。きっと大事な情報がたくさんあるはずです。お客様がどのような働き方をしたいのか、現在の働き方で改善したいことは何か、本質を見極めるために、お客様とのコミュニケーションは何よりも大切にしていかなくてはいけない部分であると常に考えています。

オフィス・ラボではお客様との二人三脚で、100社100通りのご提案に日々挑戦しています。
働き方について日々研究をし、試行錯誤を繰り返しています。オフィスだけでなく、本件のような「働く空間」全般のプロデュースが私たちの得意分野です!
こんな働き方をしたい!この悩みを改善したい!などのご要望があれば、是非一度相談をお待ちしております。

 

(ファシリティデザイン部 / 木戸 麻衣子)

ファシリティデザイン部
この記事を書いた人
オフィス・ラボ担当者
ファシリティデザイン部

FD部メンバー。オフィスのレイアウトからデザイン、什器備品の提案まで幅広くご対応させていただきますので、お気軽にお声がけいただけますと幸いです。