オフィスで快適に働くためには、ある程度の空間的なゆとりが必要です。天井高が低いと圧迫感を覚えやすく、従業員のストレスにつながるリスクがあるため、注意しましょう。オフィスを開放的な空間へと生まれ変わらせる対策としておすすめできるのが、スケルトン天井へのリフォームです。
今回は、スケルトン天井とはなにかを解説したうえで、オフィスをスケルトン天井にするメリット・デメリットを解説します。また、オフィスをスケルトン天井にする際のポイントや、費用相場もご紹介することに加えて、スケルトン天井の事例も3つ掲載しています。この記事を参考にして、スケルトン天井への改修を検討してみてください。
スケルトン天井とは
スケルトン天井とは、内装や間仕切りがなく、躯体が剥き出しな状態の天井です。天井に壁紙が使われていないため、コンクリートが露出していることがスケルトン天井の特徴といえます。スケルトン天井は、天井高が必要なスタジオで採用されることが多いものの、一般的なオフィスで使われるケースも珍しくありません。
天井は空間を占める面積が大きいため、天井が低いと圧迫感を覚えやすくなり、窮屈に感じる可能性が高いでしょう。スケルトン天井を採用すると、一般的な天井と比べて天井高が80cm以上も上がるとされており、開放的な雰囲気が生まれます。
オフィスをスケルトン天井にするメリット
オフィスをスケルトン天井にするメリットは、次の4つです。
<オフィスをスケルトン天井にするメリット>
・開放感のある空間になる
・おしゃれな印象になる
・社員のモチベーションアップにつながる
・企業ブランディングにつながる
それぞれを具体的に見ていきましょう。
開放感のある空間になる
スケルトン天井は、通常の天井と比べて80cm以上も天井高が高いため、開放感のある空間になることがメリットです。もともとのオフィスの広さが変わらないとしても、スケルトン天井にするだけで広く感じやすくなり、従業員が心理的な開放感を得られるため、パフォーマンス向上につながる可能性があります。
おしゃれな印象になる
おしゃれな印象になることも、スケルトン天井のメリットです。スタジオやカフェなど、おしゃれさを優先した空間づくりをする店舗も、すすんでスケルトン天井を採用しています。
一般的なオフィスの天井には、白系統の壁紙が使われることが多く、無機質な印象は否めません。しかし、コンクリートが剥き出しな状態のスケルトン天井にすることで、悪い意味で「オフィス感」のある空間から脱却でき、おしゃれな印象に仕上がるでしょう。
社員のモチベーションアップにつながる
開放感があり、おしゃれな空間に仕上がることにより、社員のモチベーションアップにもつながります。天井高が高くなれば圧迫感が薄れるため、ストレスを抱えずに活き活きと働きやすくなるでしょう。
社員のモチベーションが上がると、さまざまな相乗効果が生まれます。生産性の向上や新しいアイデアの創出を実現できれば、企業に多くの利益をもたらすでしょう。また、エンゲージメントの向上により、離職率を低下させられる可能性もあります。
企業ブランディングにつながる
スケルトン天井にはモダンなイメージがあり、オフィスを訪れた人にも良いイメージを与えられるでしょう。これが企業ブランディングにつながる可能性があることも、スケルトン天井にするメリットのひとつです。学生に対してもアピールしやすく、優秀な人材の確保につながる可能性もあります。
オフィスをスケルトン天井にするデメリット
オフィスをスケルトン天井にすると、以下のようなデメリットも伴います。
<オフィスをスケルトン天井にするデメリット>
・配管・配線やダクトの移設が必要になる可能性がある
・排煙・スプリンクラーを整備する必要がある
・照明の工夫が必要になる
・空調効率が低下する可能性がある
・音が反響しやすくなる
・ほこりが溜まりやすく、定期的な清掃が必要になる
・工事費や原状回復時費が高額になる
7つのポイントを確認したうえで、対策を講じながらスケルトン天井に改修しましょう。
配管・配線やダクトの移設が必要になる可能性がある
天井には、配管・配線やダクトといった、建物の構造上欠かせないパーツがあります。スケルトン天井にすると、それらのパーツが剥き出しになるため、整備が必要な可能性があることがデメリットです。配線工事は、専門の業者に依頼する必要があるため、工事に高額なコストがかかります。
排煙・スプリンクラーを整備する必要がある
配管・配線ダクトと同じように、天井には排煙やスプリンクラーといった機能も付帯しています。スケルトン天井にする場合は、工事によりこれらの機能を排除せざるを得なくなる可能性が高く、工事の際は再整備しなければなりません。スプリンクラーの設置は消防法により義務付けられているため、注意が必要です。
照明の工夫が必要になる
スケルトン天井に変更すると、天井高が80cm以上も高くなるため、照明の位置が変わります。改装前に使っていた照明をそのまま利用すると、照明の距離が物理的に遠くなり、暗く感じる可能性が高いこともデメリットです。
この場合の対処法としては、照明の数を追加したり、ペンダントタイプの照明に変更したりといった方法が有効です。また、天井を白系のカラーで塗装すると照明が明るく反射しやすくなるため、コンクリートが剥き出しの状態のままにしているよりも、明るい印象になるでしょう。
空調効率が低下する可能性がある
スケルトン天井により空間が広くなることはメリットですが、その代償として空調効率が低下する可能性があります。もともとの空調は、天井があることを想定して効率を調整しています。冷暖房が効きにくくなったり、冷暖房を効かせるためにパワーを上げて、光熱費が高くなったりする可能性が高いため、要注意です。
空調効率を低下させないためには、空調も踏まえた設計ができる、実績ある施工会社に依頼することをおすすめします。すでに工事を行っている場合は、シーリングファンを後づけして、空気を対流させるといった対策をとると良いでしょう。
音が反響しやすくなる
オフィスの天井には、吸音性や遮音性の高い天井板が使われていることが多く、そのおかげで音の反射を抑えられています。しかし、スケルトン天井に改修すると天井板を取り除くため、どうしても音が反響してしまうこともデメリットです。
音の反響を抑えるためには、壁に吸音パネルを取り付けたり、床にカーペットを敷いて歩行音を抑えたりといった対策が必要です。スケルトン天井への改修工事そのものとは別にコストがかかるため、予算計画に対策にかかる費用を組み込んでおきましょう。
ほこりが溜まりやすく、定期的な清掃が必要になる
一般的な天井の場合、配管部分に溜まるほこりなどは、天井が受け止めて屋根裏に溜まります。しかし、スケルトン天井の場合は、そのままデスク上などにほこりが落ちてしまいます。快適に業務を行うためには、定期的な清掃が必要になり、外部業者に委託する場合は清掃費用を支払わなければなりません。
工事費や原状回復時費が高額になる
工事費が高額になりがちなことも、デメリットです。これまでにご紹介したとおり、スケルトン天井に改修する場合は、以下のような費用がかかる可能性があります。
<スケルトン天井に改修する際にかかる工事費用の一覧>
・スケルトン天井への改修工事そのものにかかる費用
・配管・配線やダクトの移設費用
・排煙・スプリンクラーの整備費用
・照明を変更する費用
・空調を整備する費用
・防音対策にかかる費用
また、想定以上の劣化が見られる場合は塗装する必要が生じるなど、天井を開けてみてはじめて追加工事が必要なことが発覚する場合もあることに、注意しなければなりません。
さらに、賃貸物件に入居している場合は、退去時に原状回復をする義務があり、天井を元の状態に戻す必要が生じます。将来的に、もう1度工事をする手間と費用がかかることも把握したうえで、スケルトン天井に改修しても良いか検討する必要があるでしょう。
オフィスをスケルトン天井にする際のポイント
先述したように、オフィスをスケルトン天井にするデメリットも多いため、失敗を防ぐためには綿密に対策を立てなければなりません。オフィスをスケルトン天井にする際のポイントは、次の2点です。
<オフィスをスケルトン天井にする際のポイント>
・事前に工事可能か確認する必要がある
・専門家に相談するのがおすすめ
それぞれを具体的に見ていきましょう。
事前に工事可能か確認する必要がある
ビルの規約や法律により、スケルトン天井へのリフォームが禁止されたり、リフォームの内容に制限が設けられたりする可能性があります。勝手にスケルトン天井にリフォームすると、その後に管理会社とトラブルになり、すぐに原状回復をするよう求められる場合もあるため、事前に管理会社に確認しましょう。
専門家に相談するのがおすすめ
スケルトン天井へのリフォームに伴い、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
<スケルトン天井へのリフォーム後に起こりがちなデメリット>
・配管がごちゃごちゃしていて見栄えが悪い
・スプリンクラーなど法律により義務付けられている設備を排除してしまった
・照明が暗くて仕事の効率が悪くなった
・音が反響して騒々しく、仕事に集中できない
・配管に溜まったほこりが落ちてきて不衛生
これらの問題が起こるリスクをなくして、従業員が快適に働ける環境を守るためには、専門家への相談がおすすめです。スケルトン天井へのリフォームに慣れている専門業者は、上記のトラブルを見越したうえで設計を行うため、おしゃれで機能的なスケルトン天井にリフォームできる可能性が高くなります。
スケルトン天井の工事にかかる費用
スケルトン天井の工事にかかる費用をリストアップします。
<スケルトン天井の工事にかかる費用の一覧>
・天井ボードを取り除く費用
・配線やダクトの移設にかかる費用
・照明器具や空調設備、警報機を設置する費用
・スプリンクラーを水抜きしたうえで撤去し、再設置する費用
・撤去した造作物を廃棄する費用
スケルトン天井にリフォームする場合にかかる費用相場は、1坪あたり5万円が目安です。オフィスの広さを100平米と仮定した場合、坪数に換算すると30坪となるため、目安として150万円ほどの工事費が必要になるでしょう。
スケルトン天井の事例3選
実際に、スケルトン天井へのリフォームを行った事例を3つご紹介します。ここまでにご紹介したとおり、スケルトン天井にはデメリットや注意点もありますが、それを覆すだけのメリットがあることも事実です。リフォーム後の写真も掲載しているため、スケルトン天井が自社に適しているかイメージしながら確認してみてください。
<スケルトン天井の事例3選>
・東急不動産 様
・サーバーワークス 様
・ArtSpark Holdings 様
それぞれを具体的に見ていきましょう。
東急不動産 様
デザイン監修で、隈研吾都市設計事務所に協力を得たコラボレーション案件で、「オーガニックリボンが緑との交流をつなぐ、森のようなオフィス」をコンセプトに改修した事例です。
スケルトン天井に、オーガニックリボン(木製のルーバー)を重ねて、河川のように活かしながらフロア全体につなげています。デスクの島は硬いイメージになりがちですが、天井のオーガニックリボンに合わせて角度をつけたレイアウトを取り入れることで、柔らかい印象を生み出しました。
サーバーワークス 様
サテライトオフィスの新規開設プロジェクトのため、本社とは違った環境で集中できる作業スペースの確保を重要視した設計を行った事例です。イベントスペースとしても活用する予定の箇所に、スケルトン天井を取り入れることで、フレキシブルで開放的な空間を生み出しています。
ArtSpark Holdings 様
「暗くて狭い」「空気が悪い」といった課題を抱えていたオフィスを改修した事例です。
もっとも強いこだわりを持って設計した箇所が、スケルトン天井を導入し、オフィスのなかで一番景観の良い場所に設置した「SPARK CAFE」です。従業員の休憩スペースやミーティングスペースとして、そして社外の方々を招いてセミナーを開催するスペースとしても使用されており、オフィスのなかでも賑わうスペースになりました。
まとめ
スケルトン天井とは、躯体が剥き出しな状態の天井を表す言葉です。オフィスをスケルトン天井にすることにより、開放的でおしゃれな印象に演出しやすくなり、企業ブランディングにつながるほか、社員のモチベーションアップも実現しやすいでしょう。
ただし、スケルトン天井に改修することによって、照明が暗くなったり、音が反響しやすくなったりするリスクがあります。また、排煙・スプリンクラーなど、法律上必要な設備も設置しなければなりません。おしゃれさだけではなく、オフィスを機能的に活用するためには、スケルトン天井への改修実績が豊富な専門家に相談することをおすすめします。
「オフィス ラボ」は、設計・デザインを含め、オフィスのトータルプロデュースを行っています。ぜひ一度お問い合わせください。