さまざまな企業でオフィスにグリーンを取り入れる「グリーン化」が進んでいます。
オフィスにグリーンを取り入れることは、眼精疲労を和らげたり、ストレスを軽減したりする効果が期待できます。
この記事では、オフィスにグリーンを導入する効果や、グリーンが人に与える効果、オフィスにグリーンを置くポイントをご紹介します。
オフィスにグリーンを導入すると社員の生産性がアップする
オフィスにグリーンを導入することは、社員の生産性アップにつながります。
146人を対象に行なった「平成30年度職務環境における植物の導入による人々の福利・健康の向上及び生物多様性の主流化に関する調査業務報告書」によれば、オフィスにグリーンを取り入れたことで、以下のようなポジティブな効果が確認できています。※
とくに、「リラックス/気分転換」「居心地の良さ」「自然な明るさ」「落ち着付きのある空間」の4項目で、半数以上の人が効果を実感しています。
この結果からわかるように、オフィスにグリーンを取り入れることは、社員のモチベーションや生産性アップ、リラックスに効果的だといえるでしょう。
※平成30年度職務環境における植物の導入による人々の福利・健康の向上及び生物多様性の主流化に関する調査業務報告書 (入手日 2021年12月27日)
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/private_participation/health/index.html
グリーンが人に与える3つの効果
グリーンにはストレスを軽減させる効果、快適度をアップさせる効果があるとご紹介しました。
グリーンはほかにもさまざまなポジティブな効果を持っています。
ここでは、グリーンが人に与える効果を3つご紹介します。
1. リラックス効果がある
グリーンには人の心をリラックスさせる効果があります。
人々が仕事をするために集まるオフィスには、常に緊張感が漂っており、緊張状態が続くと、本来持っている力を十分に発揮できないこともあるでしょう。
東京農業大学では、歯医者の診察室にグリーンを置いたとき、どれほど人の緊張が和らぐかどうかを調べました。
結果は、なにも置いていない診察室に比べて、グリーンを置いた診察室の方が、リラックス効果が高いことがわかっています。※
※参照:東京農大農学集報|緑化が被験者に与える緊張感の変化−歯科医診療室を事例として−(入手日 2021年12月10日)
https://core.ac.uk/download/pdf/228782889.pdf
グリーンで心と体が癒すことができれば、社員の生産性アップにつながるでしょう。
2. 眼精疲労を和らげる
グリーンは目の疲れを和らげる効果があります。
オフィスでは長時間にわたってパソコンを使用しますが、目を使いすぎると、肩こりや吐き気、頭痛やイライラの原因にもなりかねません。
愛媛大学では、眼精疲労とグリーンの関係を調べる実験が行われました。[注3]
実験内容は、30分間のパソコン作業後にグリーンを5分見る動作を6回繰り返すものです。
結果からわかったのは、緑色のグリーンが最も眼精疲労を和らげるということです。
緑色には少し劣るものの、はんてん模様のグリーンも眼精疲労を和らげることがわかりました。※
※参照:愛媛大学 農学部 グリーンアメニティ学科 |Q:植物には目の疲れを癒す効果があるの?( 入手日 2021年12月10日)
http://web.agr.ehime-u.ac.jp/~pgs/amenity/cff.html
このように、グリーンをオフィスに導入することは、社員の体調面を気遣うことにもつながります。
3. オフィス内の環境を整える
オフィスにグリーンを導入することで、室内環境の充実が期待できます。
豊橋技術科学大学大学院の調査では、オフィスに植物を設置したことによって温熱環境、空気環境の満足度が向上しています。※
同調査によって植物がない場合、室温が高く、乾燥していると感じる傾向にあることがわかっています。
室温と作業効率は関係しており、室温が1℃あがることによって作業効率が2.1%低下するという調査があることから、植物によってオフィスの室温が安定することで、業務効率の低下を防げるでしょう。※
※一般社団法人 日本インドア・グリーン協会
http://okunairyokka.jp/data/report2.pdf(2021-12-27)
※コールセンターの室内環境が知的生産性に与える影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2005.3/0/2005.3_2053/_pdf/-char/ja(2021-12-27)
オフィスにグリーンを設置する目安は10~15%
オフィスにグリーンを設置するときは、緑視率を参考にしましょう。
緑視率とは、人の視界に入る緑の割合のことをいいます。
グリーンの持つ効果を十分に得るには、ほどよくグリーンを配置することが大切です。
適切な緑視率には諸説ありますが、一般的には10~15%がベストだといわれています。
大阪府が発表している調査結果によれば、緑視率が25%を超えると、人は「緑が多い」と感じるようです。※
オフィスの空間デザインを崩さないよう、適切な量のグリーンを配置しましょう。
※参照:大阪府|緑視率調査ガイドライン( 入手日 2021年12月10日)
https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/17426/00000000/guideline.pdf
<h2>リアルグリーンのメリットとデメリット</h2>
オフィスに置くグリーンは、リアルグリーンと、フェイクグリーンの2種類があります。
ここでは、リアルグリーンを置くメリットとデメリットを紹介します。
リアルグリーンのメリットは上述のとおり、以下の3点が挙げられます。
- リラックス効果がある
- 眼精疲労を和らげる
- オフィス内の環境を整える
一方、リアルグリーンのデメリットは以下の3点です。
- 世話の手間がかかる
- 害虫対策が必要な場合がある
- 置く場所が限られる
デメリットは世話の手間がかかることでしょう。
種類によっては頻繁な水やりが必要であったり、害虫が湧いたりするため対策をしなければいけません。
また賃貸でビルの一角にオフィスを借りている場合は、建物がグリーンを禁止していないかどうか確認する必要があります。
大きくなればなるほど重さも出てくるため、置く場所も限られます。
フェイクグリーンのメリットとデメリット
次にフェイクグリーンのメリットとデメリットを紹介します。
フェイクグリーンのメリットは以下の3点です。
- 世話に手間がかからない
- 自由にレイアウトできる
- 軽い
フェイクグリーンのメリットは、世話に手間がかからないことです。
リアルグリーンは水やりや害虫駆除といった世話をしなければいけない一方で、フェイクグリーンはホコリを払うくらいの世話ですみます。
土や日光を必要とせず、リアルグリーンと比べて軽い作りのものが多いため、自由にレイアウトできるのも魅力です。
フェイクグリーンのデメリットは以下の3点です。
- リアルグリーンより劣って見えることがある
- 色落ちする
- 眼精疲労などに期待される効果が若干落ちる
デメリットは、ものによってはリアルグリーンよりも劣って見えることです。
また日当たりが強い場所に置いておくと色落ちすることもあります。冒頭でご紹介したストレスや眼精疲労を緩和する効果は、リアルグリーンに比べると若干劣ります。
オフィスにグリーンを置く3つのポイント
オフィスにグリーンを置くことは、さまざまなメリットであふれています。
実際に置くときは、以下の3つのポイントを意識して導入を検討してみてください。
1. 手間がかからないグリーンを選ぶ
オフィスにグリーンを導入するときは、できるだけ手間がかからない種類を選びましょう。
グリーンからさまざまな効果が得られるといっても、世話に手間がかかりすぎては業務に支障がでてしまいます。
リアルグリーンの場合、おすすめは「ポトス」「モンステラ」「カポック」「サンスベリア」です。
どれも耐陰性があるため、オフィス内でも育てられます。
定期的な水やりや植え替えが必要なため、手入れがしやすい場所に置くと良いでしょう。
またリアルグリーンは、成長とともに縦にも横にも大きくなります。
設置するときは、人が出入りしたり歩いたりする動線を邪魔しない場所を選びましょう。
2. リアルグリーンとフェイクグリーンを使い分ける
リアルグリーンとフェイクグリーンにはそれぞれメリットとデメリットがあります。
それぞれの特徴を活かしつつ配置を決めれば、より快適なオフィスレイアウトができるでしょう。
たとえばリアルグリーンは眼精疲労やストレスを和らげる効果が高いため、オフィスやデスク周りに置きます。
大きさのあるグリーンはオブジェにもなるため、シンボルツリーのようにしてエントランスに置くのも良いでしょう。
フェイクグリーンは重さがなく、中に針金が入っているタイプが多いため、高い位置にも使えます。
例えば天井周りから吊るしたり、壁に這わせたり、照明に巻き付けたりして使うのも良いでしょう。
3. レンタルするか購入するかを考える
オフィスにグリーンを導入する際は、レンタルか購入かを考えましょう。
リアルグリーンの場合、定期的な水やりや剪定、植え替えといった世話をしなければいけません。
社員が世話をすることで得られるメリットもありますが、グリーンの数が増えれば増えるほど世話に労力がかかりすぎてしまいます。
フェイクグリーンはリアルグリーンに比べて世話に手間がかかりませんが、やはり数が増えるにつれ、ホコリを落とす掃除の手間が増えます。
色が落ちれば買い替える必要もあるでしょう。
グリーンを購入する場合は、世話や掃除にかかる労力や、鉢や肥料などを買い足すコストも考えて導入することが大切です。
レンタルの場合は、月額料金を支払いグリーンを導入します。
水やりや落ち葉の掃除、剪定や追肥といったメンテナンスもレンタル業者が行ってくれるため、世話に労力をかける必要がありません。
なかにはグリーンとオフィス家具が一体化しているグッズもあります。
オフィスレイアウトをプロと相談しながら決められるため、グリーンの効果を十分に得られるでしょう。
ただしグリーンを置いている間はコストがかかります。オフィスに合った方法を見極めることが大切です。
オフィスにグリーンを導入してリフレッシュしよう
オフィスにグリーンを導入することは、社員のストレスを下げ、生産性を上げることにつながります。
グリーンにはストレス軽減効果以外にも、リラックス効果、眼精疲労を和らげる効果、空気をリフレッシュする効果や社員間のコミュニケーションを盛んにする効果があります。
オフィスにグリーンを導入するときは、緑視率10%~15%を目安に設置しましょう。
リアルグリーンとフェイクグリーンにはメリット、デメリットがありますが、それぞれの良さを活かし、オフィスをグリーンで彩ることが大切です。
グリーンを導入するポイントは、手間がかからないグリーンを選ぶこと、場所によってリアルグリーンとフェイクグリーンを使い分けること、レンタルするか購入するかを考えることの3つです。
オフィスにあったものを選び、豊かな働き方を再現しましょう。
[注1]
平成30年度職務環境における植物の導入による人々の福利・健康の向上及び生物多様性の主流化に関する調査業務報告書
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/private_participation/health/greenoffice_report.pdf
[注4]一般社団法人 日本インドア・グリーン協会
http://okunairyokka.jp/data/report2.pdf(2021-12-27)