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オフィスの防災で社員の命を守る|やるべき9つの対策やポイントを解説

2024.10.04 #BCP

2024年の年始に発生した能登半島地震からもわかるように、日本ではいつどのような災害が発生するかわかりません。万一の際に社員の命を守り、会社の財産を残すために必須となるのが防災対策です。

今回はオフィス防災でやるべきこと9つをチェックリストにしたうえで、それぞれの対策のポイントを解説します。火災が発生しやすい原因や、法令違反に該当する状態なども紹介するので、ご自身のオフィスが危険な状態に置かれていないかを確認しましょう。

オフィスにおける防災の重要性

2024年の年始に発生した能登半島地震は、日本国内のみならず世界中に大きな衝撃を与えました。日本は地震大国であり、いつどこで被災するかは誰にもわかりません。また、日本には地震だけでなく、大雨・洪水などによる災害のリスクもあります。

さらに、さまざまな電気機器が密集するオフィスは火災か起こりやすい環境です。会社で働く人の命を守るためにも、会社内にある貴重な情報や財産を守るためにも、オフィスにおける防災対策は高い重要性を持っています。

オフィスの防災は法律・条例で定められている

オフィスに対する防災対策は、法律や条例においても遵守するよう求められています。労働基準法により、使用者は労働者の命や身体の安全確認に努めなければなりません。条例は都道府県により異なりますが、一例として東京都には「東京都帰宅困難者対策条例」があり、従業員の一斉帰宅を抑えるために、3日分の水と食料を備蓄するよう奨励されています。

【チェックリスト】オフィス防災でやるべき9つのこと

まずはオフィス防災でやるべきことを9つリストアップします。防災対策のチェックリストとしてご活用ください。

 

【オフィス防災でやるべき9つのこと】

□ 避難経路を確保する

備蓄品・防災グッズを用意する

家具や機器の転倒対策をする

ガラスの飛散防止対策をする

扉の周辺やデスク周りに大きな家具を置かない

情報収集・伝達や安否確認の方法を考える

パソコンのバックアップを定期的に行う

社員に避難方法や消火器の場所を周知する

社員全員で避難訓練を行ったり、防災セミナーに参加したりする

 

消火器やスプリンクラー、火災報知器、誘導灯などの設備は、オフィスが入っているビルが責任を持って管理・点検してくれることが一般的です。ただし、すべてのビルが防災対策に力を入れているとは限らないため、防災に向けたビルの取り組み内容を確認しておきましょう。

ここからは、チェックリストで取り上げた9つのポイントについて詳しく解説します。

①避難経路を確保する

オフィスの防災において、もっとも重要な対策ともいえるのが避難経路の確保です。火災などが発生した際、避難経路に物が散乱していると道がふさがれてしまい、スムーズに非難ができません。2001年に東京・歌舞伎町で発生した雑居ビルの火災では、避難経路となるはずの階段が物置として使われていたため避難者の逃げ道がなくなり、44名の死亡者を出すという悲劇が起きています。

まずは避難経路をわかりやすく表示するなどの対策を行い、そのうえで避難経路に段ボールなどの障害物が設置されていないか確認し、必要に応じて撤去・整理しましょう。オフィスの間取りの問題で適切な避難経路を確保できない場合は、改装やオフィス移転を検討することをおすすめします。

②備蓄品・防災グッズを用意する

大規模な地震などの災害に見舞われると、電車などの公共交通機関がストップして帰宅困難になるほか、電気・ガス・水道などのインフラが復旧するまでにも時間がかかります。インフラが復旧し、支援が届くまでの時間を社内でも安全に過ごせるように、数日分の備蓄品と防災グッズを用意しておきましょう。

万一に備えてそろえておくべき備蓄品・防災グッズは、次のとおりです。

【用意すべき備蓄品・防災グッズ】

アイテム
ラジオ、メガホン、台車、ガスコンロ
懐中電灯、ランタン、バケツ、ブルーシート、消火スプレー ナイフ、缶切り、栓抜き、ライター、マッチ、ろうそく
救急セット、救出工具セット
消毒剤、液体ハミガキ
レスキュー用の笛、ヘルメット、レインコート、携帯電話の充電器 ウェットティッシュ、歯ブラシ、軍手
毛布
使い捨ての食器
着替え用のTシャツ、タオル、マスク
カイロ
飲料水
食料
簡易トイレセット
乾電池
必要な数の目安
1台
2~3個
   
1~2セット
   
1~2本
1人1個
1人1枚
1人3個
1人3枚
1人6個
1人9リットル
1人9食
1人18回分
防災グッズに対応した種類を適量

支援が届くまでにかかる日数は3日といわれているため、飲料水や食品は最低でも3日分、余裕を持たせたい場合は1週間分を確保しておきましょう。

また、オフィスにつき1~2個程度が必要な備品については、緊急時に誰が使うのかをあらかじめ決めておくと、いざというときにスムーズな防災活動ができます。

③家具や機器の転倒対策をする

強い地震が発生すると、家具や家電などの機器が転倒する可能性があり、それに巻き込まれるとケガをしてしまいます。とくに背の高い家具には転倒防止用のアイテムを取り付けておき、転倒による事故を防ぐように対策しましょう。主な耐震器具と使い方の特徴は、次のとおりです。

【転倒対策に有効なアイテムと使い方】

アイテム
L字金具
ベルト式金具
ストッパー
突っ張り棒
キャスター下皿
粘着マット
使い方
ボルトとネジをオフィスの壁などに打ち込んで家具を固定する
キャスター付きの家具同士を接続して横への移動を防ぐ
家具の前面に取り付けて転倒を防ぐ
壁や天井に家具を押し当てて移動しないように固定する
キャスター部分に取り付けて移動を防ぐ
電子機器の裏面に取り付けて落下を防ぐ

賃貸契約を結んで使っているオフィスの場合、管理規約により、L字金具などの壁に穴をあけるアイテムの使用が認められない場合があります。勝手に工事をすると契約違反とみなされたり、退去時に原状回復工事をしたりしなければならないため要注意です。工事を行う前に管理会社や管理組合に工事の内容を説明して、工事をしてもよいかどうかを確認しましょう。

④ガラスの飛散防止対策をする

災害による衝撃で、家具に付いているガラスや、窓ガラスが割れてしまう可能性があります。このとき、割れたガラスが周囲に飛び散ると、ガラス片が刺さってケガをするリスクがあるため注意しましょう。

もっとも有効な対策は、破損する恐れのあるガラスに「飛散防止フィルム」を貼る方法です。万が一ガラスが割れて粉々になったとしても、ガラス片をフィルムが吸収して拡散させないため、二次被害にあうリスクを大幅に減らせます。

窓ガラスが割れた場合は、雨風を防ぐための対策もしましょう。段ボールとガムテープがあれば、破れてしまった窓をふさいでカバーできます。亀裂が入ったガラスを放置するのも危険なので、亀裂にガムテープを貼るなどして応急処置を行いましょう。

⑤扉の周辺やデスク周りに大きな家具を置かない

扉の周辺やデスク周りには大きな家具類を置かずにすっきりさせておくなど、レイアウト面での配慮も必要です。「家具は非常時に倒れる」ことを前提として考え、被災時の状況をイメージしながら、安全な場所に家具を設置しましょう。

扉の近くに大型家具があると、災害で家具が倒れたときに扉をふさいでしまうことがあり、避難の妨げになります。また、倒れた家具の下敷きになり命を落とす人もいるため、デスク周りのように多くの人が集中する箇所にも、必要以上の家具類を設置するべきではありません。

⑥情報収集・伝達や安否確認の方法を考える

災害が発生した場合、企業は責任を持って従業員の安否情報を確認しなければなりません。被災時に社内にいた社員だけでなく、外回りなどで社外にいた社員や、休暇などにより自宅で過ごしていた社員の安否確認も必要なため、連絡体制を整えておきましょう。

普段の連絡手段なら電話だけでも十分ですが、災害が発生すると電話がつながりにくくなります。緊急連絡先としてメールアドレスも追加で登録するように求めたり、LINEなどのアプリを使って連絡をする体制を整えたりして、複数の連絡先を把握して万一の事態に備えましょう。

⑦パソコンのバックアップを定期的に行う

災害時にはパソコンやタブレット、スマホなどの端末が利用できなくなる恐れがあります。とくにパソコンはわずかな衝撃や突然の停電などが原因で故障する可能性があるため、定期的にパソコンのバックアップをとり、業務に必要な情報を保護しておきましょう。

⑧社員に避難方法や消火器の場所を周知する

社員に対しても避難方法や消火器の場所を周知して、いざというときに多くの社員が率先して避難行動をとれるように準備しましょう。企業側がどれだけ防災対策に力を入れていたとしても、避難経路がわからなかったり、防災アイテムの場所や使い方がわからなかったりすると意味がありません。

最低限の対策として、オフィス内の避難経路をすべての社員に向けて定期的に説明したり、避難経路の案内図をオフィス内に設置したりしましょう。津波や洪水などの水害が予想されるエリアにオフィスがある場合は、オフィスを管轄する自治体が作成したハザードマップを配布して、高台などの避難場所がどちらの方面にあるのかを周知すると安心です。

⑨社員全員で避難訓練を行ったり、防災セミナーに参加したりする

災害による被害を最小限に抑えるための対策として、避難訓練の実施も効果的です。半年~1年に1度のペースで、避難が必要なケースを想定して避難訓練を行っていると、いざというときに焦ったり慌てたりせず、冷静な避難行動をとりやすくなります。

防災セミナーでは、被災時にどのような行動をとると命を守りやすくなるのかを、防災のプロから学べます。ケガのリスクを最小限に抑える方法や、防災グッズの使い方などを学ぶことができ、被災時の心構えなども身につけられるため、グループごとの責任者やリーダーと一緒に学んでおくのがおすすめです。

オフィスで発生しやすい火災を防ぐ3つの対策

オフィスで発生しやすい火災は、以下3つの対策により防ぎやすくなります。

<オフィスで発生しやすい火災を防ぐ3つの対策>

  • OAタップを正しく使用する
  • 電気コードは定期的に交換する
  • 機器や配線の近くに水分を置かない

①OAタップを正しく使用する

OAタップは、いわゆる「延長コード」と呼ばれる製品です。複数のコンセントを同時に接続できるため便利ですが、誤った使い方をすると、OA機器から火が上がり火災につながる場合があるため注意しましょう。

OAタップが原因で発生する火災の原因は、ほとんどが消費電力のキャパシティオーバーです。OAタップごとに最大容量が決まっているので、最大容量を上回る電力を使わないように注意しましょう。

②電気コードは定期的に交換する

電気コードは経年劣化します。外傷により内側の配線が露出して火災の原因になることもあれば、内側の見えない場所で断線が発生して燃えてしまうこともあるため要注意です。以下のような使い方をしていると、電気コードが原因の火災の発生リスクが上がります。

<電気コードの劣化を早める使い方>

  • 電気コードを折り曲げて輪ゴムなどで束ねている
  • 電源コードを家具や家電の下に敷いている
  • 電気コードを床や壁などに打ち付けるようにして使っている

電源コードはとても繊細なものです。折りたたまずに伸ばして使うようにし、定期的に交換しましょう。

③機器や配線の近くに水分を置かない

コンセントなどを配線している近くに水分を置くと、プラグに溜まったほこりに水分が付着して電気が流れ、ほこりに引火して火災が発生する可能性があります。これは「トラッキング現象」と呼ばれるもので、オフィスや家庭においてしばしば火災の原因になるため要注意です。

トラッキング現象は、たとえ電化製品の電源を切っていても発生する可能性がある危険なものです。オフィスに人が不在の時間帯に火災が発生し、消し止められずに大惨事になるリスクもあります。配線の近くから水分を遠ざけることに加えて、長く家電を使わないときはコンセントを抜いたり、トラッキング防止用のカバーを取り付けたりして対策しましょう。

オフィス防災でレイアウト・設備の変更が必要なケース

ケースによっては法令違反に該当する可能性があるため、オフィスのレイアウト変更やオフィス移転、または設備そのものの変更・交換をおすすめします。法令に詳しい専門業者に依頼して、新しいオフィスの設計や改装を依頼しましょう。法令違反に該当する可能性があるケースは、以下のとおりです。

<オフィス防災でレイアウト・設備の変更が必要なケース>

  • 廊下の幅が足りていない
  • 新しく作った部屋に消火設備・排煙窓がない

廊下の幅が足りていない

床面積が200平米を超えるフロアの廊下は、両側に部屋がある場合は160cm以上、そうでない場合は120cm以上の幅が必要です。これを下回る場合は避難経路としては不適切と判断され、建築基準法に違反するため、何らかの方法により改善しなければなりません。

新しく作った部屋に消火設備・排煙窓がない

消防法などにより、新しく作る部屋には以下のような消火設備の導入が必須となる場合があります。

<消防法などにより必要となる消火設備の例>

  • 煙・熱感知器
  • 非常放送用スピーカー
  • スプリンクラー
  • 誘導灯・標識
  • 非常照明
  • 排煙設備

どの消火設備が必須となるかは、階数などのビルの規模やオフィスの広さによって異なります。オフィス設計の専門業者に話を聞きながら、必要な防災対策を施しましょう。

オフィス防災は継続・定期的な見直しが必要

オフィス防災は、最初に行うだけで終了するものではありません。たとえば避難訓練や防災セミナーへの参加は、繰り返し行うからこそ効果が出るものであり、1度参加するだけでは習ったことを忘れてしまいがちです。

防災に関連する法律は定期的に改正されますし、防災関連グッズの精度は年々向上しています。また、備蓄品や医薬品には消費期限があり、定期的に見直して買い替えなければなりません。継続的にオフィス防災を行い、万一に備えた対策をとりましょう。

まとめ

地震大国と呼ばれる日本では、いつどこで自然災害に巻き込まれるかわかりません。また、オフィスの防災は法律や条例でも定められています。今すぐにやるべきことを確認して、きちんとした防災対策がとれているかどうかをチェックしましょう。

防災対策の改善が必要な場合は、「オフィス ラボ」にご相談ください。当社はオフィスのトータルプロデュースを行っており、最新の法令やノウハウにのっとり、安全なオフィス作りに貢献いたします。レイアウト変更のみならず、オフィス移転においては移転先ビル選定などもお任せいただけます。

オフィス環境営業部
この記事を書いた人
オフィス・ラボ担当者
オフィス環境営業部