こんにちは、オフィス・ラボです。
「DESIGNER'S REPORT」はオフィス・ラボのデザイナーが、デザイナー目線でオフィスにまつわる様々なことについて考察していくレポートです。普段私たちが大切にしている「100社100通り」のオフィスをどのように創っているのか、今回も事例を通じてご紹介していきます!
はじめに
オフィス移転やレイアウト変更をきっかけに、せっかくならおしゃれなオフィスにしたい、社員のコミュニケーションが活発になるようなオフィスにしたいなど、様々な要望や想いや出来上がりのイメージを持たれる企業様も多いですよね。プロジェクトのご担当者の皆様は、漠然とした会社側からのイメージやミッションを具体的にどうしていけばいいのかわからないと思います。
そこで今回は、「 プロジェクトのゴール設定とデザインの関係性 」に注目し、どうすればプロジェクトの成功に結びつけることができるか施工事例とともにご紹介していきます。
プロジェクト ⇔ デザインの正しい関係性
プロジェクトとは目的を達成する計画であり、デザインはその計画を具体的に実現する方法、解決策の一つです。例えば、オフィス移転やレイアウト変更プロジェクトでは、快適で機能的なオフィス環境を構築することが目的です。なぜなら、オフィスは従業員が一日の多くの時間を過ごす場所だからです。そこで働く人たちのモチベーションの維持が重要な課題となります。なかでも生産性の向上を促進させるためには、各エリアのレイアウトや様々な空間配置、照明、色調、家具や装飾品などのバランスのとれたデザインが必要です。優れたデザインは、効率的なコミュニケーションの後押しをしてくれるので、コラボレーションによる活性化、良質のコミュニケーションによるストレス軽減、適切な環境創りによる健康増進など様々な効果の実現を可能にします。つまり、デザインはプロジェクトの成功を実現するために重要な要素の一つです。
さらに、目的を達成するためには、スケジュール管理、品質管理、コスト管理などの管理業務にも配慮する必要があります。このことから、プロジェクト計画とデザインは、密接な共存関係にあり、デザインにおいては、プロジェクトのゴール設定を十分に理解した上で設計を進めることが求められます。
それでは、実際のプロジェクトのゴール設定と進め方について解説していきます。
①目的を明確にする
何の為に行うのか、何を実現したいのか、ありたい姿を明確に設定します。オフィスの移転やレイアウト変更のプロジェクトを行う目的は様々です。
例えば、
・従業員のモチベーション維持や業務効率化、生産性の向上
・従業員の増加に対応するため、新たな働き方に対応するため
・テレワークによる遊休スペースの活用
・オフィスの集約や分散
など、お客様から多様なご意見やご相談を頂いております。
どれも、企業が成長し、存続し続ける為に必要な要素です。ここで大切なのは、ただ目的を「オフィスの集約や分散 」「スペースの活用化」ということだけではなく、「従業員が集まることで、イノベーションを起こしたい」「テレワーク、リアルでのコミュニケーションを活性化したい」など、ありたい姿を定義し、理想の働き方まで深掘りしてゴールを設定することです。
②目標を設定し、計画をたてる
目的を達成する為に、いくつかのゴール(目標)を設定します。
具体的には下記のような条件を洗い出し、優先順位を決め、行動計画をたてます。
・期間
・場所や規模の確認
・解決すべき課題・変えたいポイントは何か
・コスト
③共有する
プロジェクトの目的や企業が進むべき方向性が決まったら、チーム全員に共有しましょう。チームメンバーにきちんと理解してもらうことは、プロジェクトを進める上で重要です。
コンセプトの策定
プロジェクトのゴールが確定したら、オフィスデザインのコンセプトを考えます。
オフィスデザインにおけるコンセプト策定は非常に重要で、プロジェクトの目的をスピーディーに、より深く浸透させるために役立ちます。つまり、デザインの方向性を明確にし、目的に向かって効果的に進めるための大切な作業なのです。次のような具体的なキーワードや要件から、適切なコンセプトを導き出します。
例えば イノベーションの創出
一口にコミュニケーションやコラボレーションを促進するといっても各企業によって方法は様々です。適切なコミュニケーションは、定期的なミーティングや情報共有による連携を行うことで個々の能力を最大限に発揮します。コラボレーションは、異なる立場の人々が共同で作業することで、意外性や付加価値の創造をしていきます。新たな事への挑戦や新たな価値・製品の創出へと導く方法が適切なコミュニケーションでありコラボレーションです。コミュニケーションやコラボレーションの仕掛けや仕組み創りが、イノベーションの創出を促します。
例えば ブランドの社内浸透
オフィス内に企業文化や価値観、ビジョン、ミッションなどの経営理念を可視化することで、社員に経営理念を浸透させることができます。また、オフィスブランディングに合わせたデザインになっていることで、来客にも好印象を与えることができます。
例えば リクルーティングの向上
魅力的なオフィス空間を提供することで、企業は優秀な人材を確保することができます。特に若い世代の労働者は、働く環境に重きを置く傾向があり、オフィスデザインは企業選びの判断材料に大きく関わります。
例えば 従業員の健康と福利厚生の重視
近年、企業においては、従業員のウェルビーイング(健康的で幸福な生活)に注目する傾向が高まっています。健康的で快適な職場環境を整えることにより、従業員のストレスや疲れを軽減し、健康と福利厚生の向上に繋げることが目的です。
デザインのテーマを決める
コンセプトが決まったら、オフィス空間のデザインテーマを決めます。デザインのテーマが定まっていないと、表現したいことが曖昧になり、デザインを通して伝えたいことが上手く伝わらないことがあります。さらに、デザインの方向性や色使いなどの細かい部分で迷いやすくなり、デザインの制作期間が長引いたり、コストがかかったりすることもあります。
テーマのあるデザインは説得力があり、従業員のモチベーションや生産性に直接影響を与えます。そして、快適で魅力的な環境は、従業員が働くことを楽しませ、生産性を高めることができます。また、企業のブランドやイメージを反映することができ、顧客やビジネスパートナーに好印象を与えたり、信頼性や信用性を高めることができます。
デザインの取り入れ方を決める
決めたテーマやイメージやカラーをどのように空間に取り入れるかも重要です。
今までのプロセスを元に、実際にオフィス移転をお手伝いさせて頂いた企業様の例を用いて解説していきます。まずは、以下のように情報を整理しました。
①目的の明確化:プロジェクトの目的は「 リクルーティングの成果向上 」
②-1目標設定 :移転先のオフィスで、何年で何名採用するか、目標をたてる
②-2計画 :実際のレイアウトに落とし込み、必要スペースと要素の優先順位決め
③ 共有する :イメージ資料を用い社内メンバーへ共有
④ コンセプト :リクルートにフォーカスしたスペースの構築と従業員の快適性
⑤ テーマ :「 ロジカルと情熱 」
「 シンプル、クール、温かみ 」
ここからは、ゾーニング計画をご説明いたします。
全体の割合から見ると、赤い点線の来客エリア(エントランス・会議室エリア)の面積が全体を占める割合は大きくなっています。今回の目的は「 リクルーティングの成果向上 」なので、来訪者へ安心感と期待感を醸成しステークホルダーへの自社の想いをしっかり伝える場と設定しています。
その為、スペースはゆったりと確保しました。デザインは、お客様の企業理念である「論理的な考え方と情熱を持って働く社風」を伝える空間を目指しました。
エントランスは、モルタル風の塗装や黒のスチール建具などの「シンプルでクール」な素材を基調とし、木目や無垢材など「温かみ」を感じられる要素をバランスよく調和することで、落ち着きや安心感を与える空間に仕上げています。
来訪者へのメッセージテーマ「 ロジカルと情熱 」にはイメージカラーを決めて取り入れました。オレンジは、「情熱」をイメージ。器具の色温度を調整して “ 燃え上がる情熱” のイメージを持たせるとともに、空間の上部に赤みのある色味を設置することで、昇っていく印象を感じていただきます。反対に、ブルーは「ロジカル」をイメージ。空間の下部に配置することで “冷静で地についている” 印象を表現しました。
各会議室にもテーマを設定し、それぞれテーマカラーと照明器具の形状で表現しました。
これらを元に、実際にできたエントランス・会議室エリアがこちらです。
まとめ
プロジェクトのゴール設定とデザインの関係性について解説させて頂きました。
プロジェクトの成功を実現する為のデザインとは、ただ希望の色や仕上材を取り入れるのではなく、人へ与える印象や言葉の意味を考え、取り入れ方や位置などを工夫することによって、目的に適した機能を果たしている空間を作ることができるのです。
オフィス・ラボではお客様との二人三脚で、100社100通りのご提案に日々挑戦しています。
働き方について日々研究をし、試行錯誤を繰り返しています。オフィスだけでなく、「働く空間」全般のプロデュースやマネジメントを得意としています。こんな働き方をしたい!この悩みを改善したい!などのご要望があれば、是非一度ご相談ください。ご連絡お待ちしております。